Vol.6 万葉人が見たことのない夏の花 ― ひまわりに思う ―

最近になって、あちらこちらで、ひまわりがようやく咲き始めました。
大きな黄金色の花が、青空に向かって真っすぐ伸びる姿を見ていると、「今年も夏がやってきたな」と実感します。見ているだけで元気をもらえる、不思議な花です。
ところが、このひまわりを、日本最古の歌集『万葉集』の歌人たちは一度も見ることがありませんでした。
ひまわりは北アメリカ原産で、日本へ渡来したのは江戸時代になってからです。そのため、奈良時代の人々が編んだ『万葉集』には、ひまわりは登場しません。
だからこそ、私はひまわりを眺めながら、こんなことを想像します。
「もし万葉人が、この夏の花を見ていたなら、どんな歌を詠んだのだろう。」
そんな思いを巡らせていると、夏を彩る万葉の歌が心に浮かびます。
私の好きな大伴家持の一首です。
【大伴家持(おおともの やかもち)】
『万葉集』巻八・一四八五番歌(夏雑歌)
「夏まけて 咲きたるはねず ひさかたの 雨うち降れば うつろひなむか」
現代語訳
夏を待ってようやく咲いた「はねず」の花も、このまま雨が降り続けば、その美しい色も褪せてしまうのだろうか。夏の花の美しさと、そのはかなさを詠んだこの歌は、短い季節を精いっぱい生きる花々への温かなまなざしを感じさせます。
「はねず」とは植物の名前で、古代の花木です。現在では諸説ありますが、庭梅(ニワウメ)や庭桜、あるいはザクロなどに比定されることがあります。花の色は淡い紅色、桃色に近く、その色を「はねず色」と呼ぶほど美しい花でした。
【大伴家持(おおともの やかもち)】
『万葉集』巻十七・四一八三番歌
「霍公鳥(ほととぎす) 飼ひ通せらば 今年経て 来向ふ夏は まづ鳴きなむを」
現代語訳
もし、ほととぎすを一年中飼っておくことができたなら、来年の夏には誰よりも早く、その美しい声を聞かせてくれるだろうに。夏の訪れを告げるほととぎすを待ち望む家持の気持ちは、季節を楽しみにする私たちの心と重なります。
もし万葉人がひまわりを見ていたなら、きっとその大きく輝く花を見上げながら、太陽へ向かって力強く咲く姿を歌に詠んだことでしょう。
万葉人が見ることのできなかった花だからこそ、その姿を眺めながら、遠い奈良時代の人々に思いを馳せることができます。
今年もひまわりが咲いた喜びを胸に、夏の光をいっぱい浴びながら、一日一日を大切に過ごしていきたいと思います。

庭で見つけた、もう一つの夏の花
ひまわりと同じキク科の植物で、小さな花が風に揺れる姿は、とても愛らしく感じられます。
ひまわりのような華やかさはありませんが、次から次へと花を咲かせ、庭に長く彩りを添えてくれるのも、この花の魅力です。
夏の庭を歩くと、主役の花だけではなく、その周りで静かに咲く花たちにも目が留まります。
そんな何気ない出会いも、私にとっては夏の楽しみの一つです。
花名:ルドベキア
和名:アラゲハンゴンソウ(粗毛反魂草)※園芸では「ルドベキア」の名前で流通しています。
学名:Rudbeckia hirta
科名:キク科(Asteraceae)
原産地:北アメリカ
開花時期:6月~10月(最盛期は7月~9月)
花名:ヒマワリ(向日葵)学名:Helianthus annuus
科名:キク科(Asteraceae)
原産地:北アメリカ
開花時期:7月~9月(品種によっては6月下旬から咲き始めるものもあります。)



